調査研究報告 第46号(令和5年3月)
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- 4601 元素分析及びストロンチウム安定同位体比分析による梅農産物漬物の原料原産地判別法の開発(PDF:630KB)
梅農産物漬物(梅漬け、調味梅漬け、梅干し、調味梅干し)について、元素分析及びストロンチウム(Sr)安定同位体比分析による原料原産地判別法の検討を行った。国産梅が原料の梅農産物漬物(以下「国産試料」と記載。「外国産試料」も同様)60点及び外国産試料50点(中国産試料49点、タイ産試料1点)を収集し、これらの仁の粉砕試料について22元素の濃度及びSr安定同位体比を測定した。Sr安定同位体比は国産試料と外国産試料で分布が重なったため、国産試料と外国産試料の判別モデルを元素濃度のみを用いて構築した。判別モデル構築に用いた試料の判別的中率(各産地の試料を正しく判定した割合)は、国産試料100 %、外国産試料98 %となり、国産-外国産判別に十分な判別性能のある判別モデルが得られた。
- 4602 元素分析によるアカシアはちみつの原料原産地判別法の検証(PDF:1.1MB)
過去に農林水産消費安全技術センターにおいて開発したアカシアはちみつの原料原産地判別法について、市販試料による検証を行った。その結果、元素濃度の分布が過去の判別モデル構築用試料と市販試料で異なっていることが確認された。その影響を低減するため、半教師付き分類(半教師あり学習)に加えて、Adversarial validationによる検証を行い、判別モデル構築用試料と市販試料の両方について適切な結果が得られる判別モデルを構築した。
- 4603 軽元素安定同位体比分析及び元素分析によるこんにゃくの原料いもの原産地判別法の検討(PDF:591KB)
軽元素安定同位体比分析及び元素分析によるこんにゃくの原料いもの原産地判別法の検討を行った。モデル試料として国産の原料いもを用いたこんにゃく(以下「国産試料」という。「外国産試料」も同様)(白こんにゃく及び黒こんにゃく)及び外国産試料(白こんにゃく及び黒こんにゃく)を両分析法で測定し、それぞれの分析法による原料いもの原産地の判別モデルを作成した。炭素及び酸素の軽元素安定同位体比分析(国産試料23点、外国産試料54点)では特異度75 %、感度67 %であった。一方で6元素による元素分析(国産試料19点、外国試料27点)では特異度92 %、感度84 %であった。
- 4604 DNA分析による大豆加工品の原料原産地判別法の検討(PDF:1.3MB)
大豆加工品の原料となる食用大豆は国内需要量の多くを輸入大豆に依存しており、原料原産地表示の科学的検証法開発が望まれている。そこで本研究では、大豆の原産地表示が「国産」である豆腐を対象として、北米産大豆の混入割合推定方法を確立するために、リアルタイムPCRを用いた定量的原料原産地判別法を検討した。GmTfl1遺伝子の第1イントロンに存在する計6塩基の挿入・欠失により大豆をa型とb型に分類するDNAマーカーを利用して、a型に特異的な配列と、両者に共通する配列を同時に増幅することでa型大豆の相対定量を行った。その結果、入手が容易な市販豆腐を相対定量法の標準試料として用いて、北米産に多く見られるa型大豆の混入割合を検量線法及びΔΔCt法のどちらでも概ね推定することに成功した。
- 4605 りんごジュース中のプロシアニジン類定量法の妥当性確認(PDF:1.0MB)
りんごジュース中のプロシアニジン類の定量分析方法を日本農林規格(JAS)として制定するため、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構が特許権を有する「プロシアニジン類の分析方法及び分析システム(特許第6508741号)」を基礎とした分析方法の妥当性確認調査を行った。りんごストレートジュースを対象として、単一試験室での調査及び11試験室による室間共同試験を行った。共同試験の結果、プロシアニジン類の含有量が8.5×10 mg/kg~2.4×102 mg/kgの範囲で、併行相対標準偏差RSDr及び室間再現相対標準偏差RSDRはそれぞれ1.1 %~2.6 %及び9.9 %~12.6 %、HorRat(R)は1.2~1.8となり、本分析方法の室間再現性は妥当であると判断された。これらの精度は質量分率に基づき算出したが、飲料品においては体積当たりの含有量を表示することが多い。このことから、体積当たりの含有量に対する拡張不確かさU(k=2)を推定した。その結果Uは、プロシアニジン類の測定含有量ρに対して0.244ρ mg/Lと推定された。この分析方法は、農林水産省によってJAS 0024として制定された。