飼料製造に係るサルモネラ対策のガイドラインの制定について
[別添]
本ガイドラインは,配合飼料工場における飼料のサルモネラ汚染を防止するため,飼料製造管理対策の基本的な遵守事項を示すものである。
サルモネラは,自然環境下における抵抗性が強く,飼料原料,媒介動物,機材等様々なものが汚染原因となり得ることから,製造管理対策の推進に当たってはこれによる汚染が,原料,製造の各段階で起こり得るとともに,汚染原因を放置すると飼料の製造を通じてさらに汚染を拡大するおそれがあること等十分に留意するものとする。
配合飼料工場は,独立行政法人農林水産消費安全技術センター等の指導の下,個々の配合飼料工場の実態を踏まえた上で,以下の対策の効果的かつ効率的な推進に努めるものとする。
1 原料に関わる対策
(1)汚染のない原料の購入
原料製造(輸入)業者から,汚染のおそれのない原料を購入する。また,場合によっては,原料製造業者の衛生管理状況の確認,サルモネラ検査成績書の提出要求等を行う。
(2)原料の輸送における汚染防止
原料輸送車は,その荷台の清掃を励行し,前に輸送した物による汚染を防止する。また,バラ原料の輸送に当たってバルク車の場合はタンクのふたを確実に閉じ,トラックの場合はシートを掛けて外部からの汚染防止に努める。
(3)原料受入時の汚染防止
ア 紙袋,トランスバック等入り原料の受入れ
受入場所の清掃を励行し,受入場所を乾燥した清潔な状態に保つとともに,荷下ろしに用いるパレットは,乾燥した清潔なものを用いる等荷下ろし作業時の汚染防止に努める。包装の著しい破損等により汚染のおそれが強い原料,水濡れした原料等は,受け入れない。
開封して原料の切込みを行った後,空袋中に原料が残らないようにするとともに,空袋の保管場所に留意し汚染防止に努める。空袋処分後は,空袋保管場所の清掃を行い,こぼれた原料,ホコリ,ゴミ等を取り除く。
イ バラ原料の受入れ
原料受入れの都度,受入口やその周辺の清掃を確実に実施し,清潔で乾燥した状態に保つ。受け入れた原料は,受入ホッパー貯留中に汚染することのないよう速やかに原料タンクに搬送する。
ウ 集塵機の設置
紙袋,トランスバック等入り原料を開封して切り込む場合に発生する粉塵又は風による原料の飛散防止のため,また,バラ原料受入れの際に発生する粉塵又は風による原料の飛散防止のため,十分な能力のある集塵機を設置することが望ましい。集塵機及び受入口又は切込口のフード内壁を定期的に清掃する。
(4)原料の保管における汚染防止
紙袋及びトランスバック等入り原料の保管場所は,清掃を励行し,清潔で乾燥した状態を保ち,保管中の汚染を防止する。また,倉庫に原料をバラで保管する場合には,表面をシート等で覆う等して倉庫内での汚染を防止する。なお,原料については,先入先出を励行する。
(5)原料の検査
搬入された原料は,定期的に入荷口数に応じて検査を実施する。その頻度は,種類,購入先等を勘案して決める。
ア 試料の採取
試料の採取は,「飼料検査実施要領」(昭和52年5月10日付け52畜B第793号畜産局長通達)に準じて行う。
イ 検査方法
検査方法は,「飼料分析基準」(令和5年12月1日付け5消安第4714号農林水産省消費・安全局長通知)によることを原則とするが,市販の簡易検査キット等によることもできる。
ウ 検査結果の通知
検査結果は,速やかに飼料製造管理者に通知する。
エ 記録,保存
検査に関する記録として,原料搬入年月日,製造(輸入)業者,購入先,原料名,採材年月日,分祈者,検査結果,実施した処置の内容等について記録し,2年間保存する。
(6)サルモネラ陽性の場合の処置
原料が陽性となった場合は,製造(輸入)業者に対して,速やかに検査結果を通知して,原因究明の上,再発防止のための改善措置を講じるよう求めるとともに,汚染の拡大を防止するため,サルモネラ陽性の原料が保管された場所を清掃し,工場内の搬送された工程等の付着物,残留物等を除去し,消毒の実施等の適切な措置を講じる。
2 飼料製造に関わる対策
(1)製造工程における汚染防止
ア 付着物及び残留物の除去
タンク及び製造工程内の付着物及び残留物を定期的に除去し清掃する。
イ 結露防止
タンクや工程の換気に留意し結露を防止する。特に,ペレットや圧ぺん等蒸気を使用する工程周辺では結露が生じ易いため,工程周辺の換気を行う。
ウ 重点管理箇所と定期検査
汚染防止対策を重点的に行う箇所を決めるとともに,実施した対策の効果判定のための定期的な検査を実施する。
エ 製造記録の整備・保管
サルモネラが検出された場合の原因調査ができるようにするため,製造日別に,銘柄ごとの製造順位,数量,使用原料等の製造記録を整備し,2年間保管する。
(2)製品の保管及び出荷における汚染防止
ア 保管場所の管理
製品の保管場所は,清掃を励行し,常に清潔で乾燥した状態に管理する。
イ 保管時の管理
ハト,ネズミ,ホコリ等の侵入による製品の汚染防止措置を講じる。
ウ 製品の出荷
トラックの荷台は清掃した上で製品を積載する。バルク車の内部は定期的に清掃を行う。バルク車の場合は,上部のふたを確実に閉じ,トラックの場合はシートを掛け,外部から汚染されないようにする。
エ 返却トランスバックの処置
返却されたトランスバックの受入れは,乾燥した清潔な場所で行い,定められた場所に保管する。返却されたトランスバックは,内外ともに十分な清掃を行い,汚れの著しいものは洗浄してから使用する。
(3)製造設備の改善
製品の残留・付着しやすい箇所,吹き出しやこぼれ箇所等を点検し,必要に応じサルモネラによる汚染防止のための製造設備の改善に努める。
(4)製品及び製造工程の検査
原料の検査に準じて,定期的に製品及び製造工程の検査を行い,その結果を飼料製造管理者に通知するとともに,記録し2年間保存する。
(5)サルモネラ陽性の場合の処置
製品が陽性となった場合は,再発防止のための原因究明を行うとともに,製造工程等の付着物・残留物等の除去を行い,消毒の実施等の適切な措置を講じる。
製造工程の検査で一部に陽性の結果がでた場合は,当該箇所の付着物・残留物等を除去し,消毒の実施等の適切な措置を講じる。
3 工場の衛生管理に関わる対策
(1)工場構内の衛生対策
ア 環境の清掃整備
工場構内の環境清掃整備は,以下の諸点を考慮して実施する。
(ア)排水側溝の清掃,消毒
(イ)構内舗装面の修繕(水溜り防止)
(ウ)不要資材の整理整頓
(エ)構内の草刈り,植栽の手入れ
(オ)廃棄物の早期処分
(カ)返却されたトランスバックの清掃及び整理整頓
イ 有害鳥獣及び衛生害虫の駆除
(ア)ネズミ対策
餌となる原料及び製品のこぼれの清掃,飲水源となる排水溝,下水溝,水溜りの清掃及び排水,巣・巣の材料等の除去等に留意して,工場構内の清掃及び整理整頓を実施するほか,殺鼠剤,トラップ,粘着シート,超音波発生装置等による駆除等を行う。
(イ)ハト等対策
餌となる原料及び製品のこぼれの清掃,飲水源となる排水溝,下水溝,水溜り,クーリングタワー等の清掃,排水及び網等による遮断を行うとともに,忌避剤,防鳥ネット,視覚・聴覚・触覚を利用した忌避法を併用する。
(ウ)衛生害虫対策
製品,原料のこぼれを清掃し,長期間使用しない機械類は,清掃して保管するほか,原料の長期在庫をもたないようにする。衛生害虫が発生した場合は,燻蒸等により駆除する。
(2)パレット,トラック等の清掃,消毒
工場内で使用するパレットは,こぼれ,ホコリが付着していない清潔で常に乾燥した状態で使用し,濡れた状態での使用を避けるとともに,保管する場合は,乾燥した清潔な場所でネズミの巣とならないよう整理・整頓する。また,工場に出入りするトラックは,出入口に消毒設備を設けて消毒する。
4 管理体制の整備に関わる対策
(1)飼料製造管理者
飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律(昭和28年法律第35号,以下「法」という。)第2条の8に規定する飼料製造管理者がサルモネラ対策の責任者として業務を遂行する。
なお,飼料製造管理者を置く必要のない事業場にあっては,サルモネラ対策の責任者(法に規定する飼料製造管理者としての資格を要しない。)を置き,本ガイドラインにおける飼料製造管理者が行うべき業務を遂行する。
(2)製造管理マニュアルの整備
製造に関わる衛生管理及び衛生検査については,次の事項を工場の実情を踏まえ規定した製造管理マニュアルを整備した上で,飼料製造管理者がその実施計画を立案し,計画的に実施するとともに,その実施状況を確認する。
ア 衛生管理に関わる事項
(ア)原料及び包装資材の保管の場所,期間,方法等
(イ)各製造工程,工場構内施設等の清掃及び消毒の実施方法,頻度等
(ウ)サルモネラ汚染飼料の保管方法と処理方法等
(エ)使用済み紙袋及びトランスバックの保管,清掃,処理方法等
(オ)ハト,ネズミ等に対する駆除対策等
(カ)搬出入トラックの衛生対策等
(キ)作業記録の作成,保管,管理等
イ 衛生検査に関わる事項
(ア)原料,製品及び関連資材並びに製造工程の検査計画等
(イ)試料の採取,保管方法等
(ウ)検査方法,検査機器,検査結果の判定基準等
(エ)検査結果の記録の作成,保存,管理等
(3)従業員教育等
ア 従業員教育
従業員が製造管理マニュアル等に基づき適正な方法で作業を行えるようにするため,定期的に従業員教育を実施する。
イ 健康管理
従業員の健康管理に留意するとともに,日常の手洗いの励行,清潔な作業衣の着用等を徹底する。