安全性未確認の米国産遺伝子組換え作物の微量混入に関するリスク管理措置について
20消安第8829号
平成20年12月25日
農林水産省消費・安全局
畜水産安全管理課長
安全性未確認の米国産遺伝子組換え作物の微量混入に関するリスク管理措置について
我が国は、飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律(昭和28年法律第35号。以下「飼料安全法」という。)に基づき、安全性が確認された遺伝子組換え作物についてのみ、飼料としての輸入と利用を認めています。
本年、米国において安全性が確認されていない遺伝子組換えトウモロコシの微量混入の事案が報告されたことを受け、遺伝子組換え作物の開発関係者に対して「安全性未確認の米国産遺伝子組換え作物の微量混入に関する再発防止策の構築等について」(平成20年12月5日付け20消安第8828号農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課長通知)によって、適切な再発防止策が講じられるとともに、仮に、微量混入が起こった場合は関係する開発者等によって、必要なリスク管理措置が迅速に講じられることを要請しました。
今後は開発者等によって有効な再発防止策等が講じられることを前提に、下記のとおり、今後のリスク管理措置を定めたので、貴会会員に周知徹底をお願いいたします。
記
1.船積み前検査の実施
微量混入を起こした開発者は、当該遺伝子組換え作物の輸出入等に関係する事業者と連携し、当該遺伝子組換え作物が日本へ輸出されないよう、船積み前検査を含めて必要な措置を迅速に講じてください。
なお、船積み前検査を行い、陰性証明書が添付されているトウモロコシに関しても、独立行政法人農林水産消費安全技術センター(以下「センター」という。)によるモニタリング検査の対象としてきましたが、今後は、船積み前検査の妥当性を確認できた場合は、検査機関による陰性証明書が添付されているトウモロコシについては、センターによる検査を行わないこととします。
船積み前検査の妥当性については、輸出国政府等の関係者からの情報提供を踏まえ、農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課(以下「畜水産安全管理課」という。)において、以下の要件を満たしているかどうかという点から判断することとします。
(船積み前検査の妥当性の判断に関する要件)
① ISO17025認定を受けていることや、GLP(注1)に従うことなどによる精度管理体制を導入しており、かつ、GeMMA(注2)技能試験等への参加等によって信頼性を保証できる検査機関により実施されること。
(注1)GLP:Good Laboratory Practice。試験設備ごとに運営管理、試験設備、試験計画、内部監査体制、信頼性保証体制、試験結果等に関する基準を作成し、試験成績の信頼性を確保するもの。
(注2)GeMMA:Genetically Modified Material Analysis Scheme。英国Department for Environment, Food Rural Affairs (DEFRA) のCentral Science Laboratory(CSL) が 実施する外部精度管理プログラム。
② コーデックス委員会が勧告する方法に従って、可能な限り多くの検査機関が参加して妥当性を確認した検査方法によること。
③ 必要に応じて、当該検査機関とセンターで同一の試料を用いたクロスチェックを事前に行い、検査の同等性が確認されていること。
2.船積み前検査の終了
船積み前検査を行った結果、以下の要件がすべて満たされたと考えられる場合、当該遺伝子組換え作物の開発者は、関連情報を付して畜水産安全管理課へ連絡してください。畜水産安全管理課は、提出された情報を参考にして、必要に応じて農業資材審議会(飼料分科会組換え体委員会)の意見を伺いつつ、船積み前検査の終了の可否を判断します。
(船積み前検査の終了に関する要件)
① 当該遺伝子組換え作物によって、飼料として安全上の問題、すなわち、畜産物の安全性への問題あるいは家畜への健康被害が引き起こされたとの報告がないこと。
② 輸出国において、当該遺伝子組換え作物の日本向け輸出が抑制されるよう、当該遺伝子組換え作物が今後生産されないことを含めて必要な措置が既に講じられていること。
③ 当該遺伝子組換え作物が、「飼料及び飼料添加物の成分規格等に関する省令の規定に基づき組換えDNA技術によって得られた生物の混入基準を定める件」(平成14年11月26日農林水産省告示第1781号)において、当該飼料が安全性の確保に支障がないものとして農林水産大臣が定める基準に
ア.適合する場合は、船積み前検査の結果等から、陽性ロット中の当該遺伝子組換え作物の混入割合が1%を下回ると判断されること。
イ.適合しない場合は、船積み前検査の結果等から、陽性ロット中の当該遺伝子組換え作物の混入割合が、日本における当該遺伝子組換え作物の検査方法の検出限界まで低下したと判断されること。
3.その他
これまで混入問題を起こした三例の遺伝子組換え作物は、いずれも米国産トウモロコシでしたが、これ以外の遺伝子組換え作物について混入問題が起こった場合には、上記の1及び2を参考にしながら、当該安全性未確認の遺伝子組換え作物の安全性に関する情報、混入水準、飼料としての利用形態、検査方法の開発状況及び検査の実施状況等を踏まえて、必要なリスク管理措置を講じていくこととします。
また、当該安全性未確認の遺伝子組換え作物の微量混入に関するリスク管理措置については、今後の科学的知見の集積、国際的動向等を踏まえて、必要に応じて、適宜見直していくこととします。